別れた彼女とよりを戻し結婚するもスグ離婚

いろいろ、あった末、私は身辺を整理し、一度実家に帰った。

大学の卒業は絶望的で、退学することを考えていた。カラオケで

売り上げを驚異的に伸ばした実績が評価され、カラオケの機材を

搬入していた営業マンのツテで、大手機械メーカーの営業として

就職が決まったのだ。周りが必死に就職活動をしている中、自分は

ホームレスをしながら女遊びをして、カラオケ店で好き放題

やっていただけなので、とても幸運な話だと思った。

 

3ヶ月後の就職で札幌に行くことが決まり、私は先に札幌に出向き、

アパートを借りた。そして地元に戻り、就職前の最後の時間を満喫した・・・

と言っても、以前のようにナンパばかりしていたわけではない(もちろん多少した)

Kをはじめ、ほとんどの女性の連絡を絶った。そして私は、同棲していた

元彼女に謝りに行った。自分がどれだけ非道なことをしてきたかを

正直に詫び一人暮らしの資金と、残りの生活費を除いたカラオケ時代の

給料を全て渡そうとした。

 

とても容姿端麗な元彼女だが、私と別れた後も、誰とも交際して

いなかったそうだ。一時は見違えるように派手になった私だったが、

就職が決まり、歯も全て治療して、それなりの“社会人”っぽい

見た目にはなっていた。なにより、カラオケ店のスタッフに

元彼女の高校の同級生がいたので、私の勝手に英雄視されている

“リンチ事件”を聞いていたようで、とても心配してくれていたのだった。

 

私の1年間養ったナンパレーダーが、不謹慎にも目の前の元彼女を

“イケる”と判断した。最初はそんなつもりはなかったが、もう一度

交際することとなった。そして遠距離恋愛しながらサラリーマンを続け、

1年後に遠距離のまま結婚。札幌(主にすすきの)でナンパレーダーを

フル活用して、1年後に離婚。紆余曲折ありながらも今の嫁と出会い、

長男が生まれた瞬間にナンパレーダーが静かに役目を終えたのだった。

1人で札幌のアパートに住んでいる時、たまに夜通し外を徘徊することが多かった。

 

ホームレス時代に、寒さを凌ぐため、大学が開くまでの間ずっと

歩き続けたあの日々を、なぜか体感したくなることがあったのだ。

“ここなら休めそう”とか“ここは24時間開いてるのか”とか、また

ホームレスになっても良いように、事前準備をしていたのかもしれない。

子供が生まれた今は、そんな徘徊はしなくなり、手をつないで

散歩することが多くなった。「お父さん、散歩好きだね!」と

息子に言われると、なんとも言えない気持ちになる日々をおくっている。